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動物宴

藤田嗣治

没後55年 藤田嗣治と猫展にて展示される、画家・藤田嗣治の作品「動物宴」についてご紹介します。

作品概要

「動物宴」は、画家・藤田嗣治が1949年から1960年にかけて制作した油彩画です。キャンバスに油彩で描かれたこの作品は、東京国立近代美術館に所蔵されています。

制作背景と意図

本作は、第二次世界大戦後に制作された作品であり、藤田嗣治の戦後の心境や時代背景が色濃く反映されていると考えられています。壁に掛けられた女性の姿と、食卓に並べられた肉の形がほぼ同一であること、そして動物たちがナイフを手に肉を取り囲む描写は、まるで亡き女性を動物たちが食らおうとしているかのような暴力的なシーンを想起させます。この描写には、藤田が戦中に描いた戦争画の影響、あるいは戦争そのものから受けた衝撃が背景にあると解釈されています。

藤田は1955年にフランス国籍を取得し、1959年にはカトリックの洗礼を受けるなど、晩年には宗教画へと傾倒していきますが、「動物宴」が制作された時期は、その転換期にあたります。 戦争による人間の尊厳の喪失や、生と死への問いかけといった、画家の内省的なテーマが込められている可能性があります。

技法と素材

藤田嗣治は、日本の伝統的な絵画技法を西洋の油彩画に取り入れた独自の画風を確立したことで知られています。特に、日本画で使われる墨と面相筆を用いた繊細な線描は、彼の作品の大きな特徴です。 「動物宴」においても、油彩でありながらもその細密な描写には、日本画で培われた技術が活かされていることがうかがえます。

意味合い

この作品のタイトル「動物宴」が示すように、動物たちが主役として描かれていますが、単なる愛らしい動物画とは一線を画します。動物たちがナイフを持ち、テーブルを囲む構図は、人間社会の縮図、あるいは戦争がもたらす悲劇や弱肉強食の世界を象徴しているとも読み取れます。壁の女性像と食卓の肉の不穏な一致は、命の尊厳や、暴力がもたらす結末について深く考えさせるものです。

評価と影響

「動物宴」は、藤田嗣治の戦後作品として東京国立近代美術館に収蔵されており、その芸術的価値は高く評価されています。2015年に東京国立近代美術館で開催された「MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」では、本作が「かわいい」という単純な見方を超え、戦争画との関連性において考察されるべき作品として紹介されました。 藤田嗣治は、その独自の画風と波乱に満ちた生涯を通じて、世界の美術史に大きな足跡を残した画家であり、彼の作品は今日においても多くの人々に影響を与え続けています。