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ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢

東京都美術館企画展示室にて開催される「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」は、フィンセント・ファン・ゴッホの芸術が今日までどのように継承されてきたのかを、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションを通じて探求する、日本で初めての展覧会です。本展覧会は、ゴッホの画業を支え、多くの作品を保管した弟テオ、その妻ヨー、そして息子フィンセント・ウィレムが果たした役割に焦点を当てることで、家族が繋いだ画家の作品と夢を後世へと伝えることを目指します。

1:展覧会の見どころ

本展覧会の最大の魅力は、これまであまり光が当てられることのなかった「家族」という視点から、フィンセント・ファン・ゴッホの生涯と芸術を深く理解できる点にあります。ゴッホが遺した膨大な作品群が、いかにして散逸することなく今日まで伝えられてきたのか、その背景には弟テオ、義妹ヨー、そして甥フィンセント・ウィレムによる献身的な努力と愛情がありました。

会場では、ファン・ゴッホ美術館の所蔵作品を中心に、ゴッホの初期から晩年にわたる30点以上の絵画と素描が展示されます。これらは、ゴッホの芸術の変遷を辿るとともに、家族が作品を守り続けた軌跡を物語る貴重な証拠となります。特に注目されるのは、《画家としての自画像》や《種まく人》といった代表的な作品群です。

さらに、本展では日本初公開となるゴッホの貴重な手紙4通も展示されます。ゴッホの作品と並んで、彼自身の言葉が綴られた手紙は、画家の内面や当時の状況、そして弟テオとの絆の深さを直接的に伝えるものであり、来場者にとって深い感動と発見をもたらすでしょう。

また、展覧会の後半には、幅14メートルを超える大規模な空間で映像が上映されるイマーシブ・コーナーが設けられます。ここでは、《花咲くアーモンドの木の枝》をはじめとするファン・ゴッホ美術館の珠玉の作品群が高精細な映像で投影され、SOMPO美術館所蔵の《ひまわり》は3DスキャンされたCG映像として紹介されます。これにより、肉眼では捉えきれない作品の細部までを体験し、ゴッホが描いた色彩と筆致の世界に没入することが可能となります。

このように、本展覧会は単にゴッホの作品を鑑賞するだけでなく、作品を未来へ繋いだ家族の物語と、その熱意が現代の技術と融合した新たな鑑賞体験を提供する、多角的な見どころに満ちた構成となっています。

2:展覧会の流れ

本展覧会は、ゴッホの作品が家族によってどのように守り継がれ、世界的評価を確立していったのかを時系列に沿って体験できるよう、全5章で構成されています。各章は密接に関連し合いながら、ファン・ゴッホ家の壮大な物語を紡ぎ出します。

第1章:ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ

最初の章では、本展の導入として、フィンセント・ファン・ゴッホとその弟テオ、テオの妻ヨー、そして彼らの息子であるフィンセント・ウィレムといった、ファン・ゴッホ家における主要な登場人物が紹介されます。ここでは、ゴッホの死後、作品の大半が弟テオに受け継がれたところから、コレクションの歴史が始まったことが示されます。この章は、後続の各章で詳しく語られる家族の物語の基盤を築き、来場者が展覧会の主題である「家族がつないだ画家の夢」を理解するための出発点となります。

第2章:フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション

この章では、フィンセント・ファン・ゴッホと弟テオの深い絆と、彼らが共に築き上げたコレクションに焦点が当てられます。画家を志したフィンセントを、画商であったテオが経済的・精神的に強く支え、彼の作品の大部分を保管していました。兄弟のコレクションからは、彼らが共に生きた時代の空気感が伝わってきます。フィンセントはパリ時代において、同時代の美術を積極的に収集しており、画家仲間との作品交換を通じて手に入れた作品も含まれています。これは、彼が当時すでに画家仲間から一定の評価を得ていたことを示唆します。また、フィンセントが熱心に浮世絵を収集していたことも紹介され、彼の芸術に与えた影響の一端が垣間見えます。この章では、ゴッホの初期からパリ時代の作品が展示され、彼の画業の基礎がどのように形成されていったのかが示唆されることでしょう。

第3章:フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描

ファン・ゴッホ家が受け継いできた200点を超える絵画と500点以上の素描・版画は、現在ファン・ゴッホ美術館に保管され、世界最大のファン・ゴッホ・コレクションを形成しています。この章では、そのコレクションの中から厳選されたフィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描が展示され、彼の初期から晩年に至るまでの画業の軌跡が詳細に紹介されます。ゴッホが短い画業の中でどのように表現を変化させ、独自のスタイルを確立していったのかを、代表的な作品群を通して具体的に辿ることができます。この章は、ゴッホ作品そのものの魅力に深く触れる機会となり、彼の芸術的探求の深さを体験する重要なセクションです。

第4章:ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが売却した絵画

テオがフィンセントの死後わずか半年でこの世を去ると、未亡人となった妻ヨハンナ(ヨー)が膨大な数のフィンセントの作品と手紙を管理することになります。この章では、ヨーが義兄の作品を世に広めるために行った献身的な努力と、その具体的な行動に焦点が当てられます。彼女は、展覧会への貸し出し、作品の販売、そしてフィンセントとテオの間で交わされた膨大な手紙の整理と出版を通じて、ゴッホが画家として正当に評価されるよう尽力しました。この章では、ヨーが戦略的に売却した絵画を通して、ゴッホの作品がどのようにして世間の目に触れ、次第に評価を高めていったのかが示されます。ヨーの行動は、ゴッホの芸術を後世に伝える上で極めて重要な役割を果たしました。

第5章:コレクションの充実 作品収集

最終章では、ファン・ゴッホ・ファミリー・コレクションがどのようにして今日の充実した内容へと発展していったのか、その歩みが紹介されます。テオとヨーの息子であるフィンセント・ウィレムは、祖父のコレクションが散逸することを防ぐため、フィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、ファン・ゴッホ美術館の開館に尽力しました。この章では、財団の設立から美術館の開館、そして現在に至るまでのコレクションの拡充と、ファン・ゴッホ美術館が果たす現代における役割が紹介されます。家族のたゆまぬ努力と情熱が、ゴッホの作品を永遠のものとし、世界中の人々がその芸術に触れることができる現在の状況を作り上げたことが、この章で結実します。また、展覧会の後半に位置するイマーシブ・コーナーもこの章の一部として、ゴッホの作品を最新技術で体験する機会を提供し、来場者に深い印象を残すでしょう。

3:全体のまとめ、結びの文章

「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」は、フィンセント・ファン・ゴッホという一人の偉大な画家の作品が、いかにして時代を超えて人々の心に響き続けているのかを、家族の視点から紐解く画期的な展覧会です。フィンセント自身の情熱的な創作活動に加え、弟テオの深い理解と支援、義妹ヨーの並外れた行動力、そして甥フィンセント・ウィレムの尽力という、三世代にわたる家族の献身があったからこそ、私たちは今日、ゴッホの作品と対面し、その「夢」を共有することができます。

本展は、ファン・ゴッホ美術館が所蔵する珠玉の作品群と、日本初公開となる貴重な手紙、そして最新技術を用いたイマーシブな体験を通じて、ゴッホの芸術世界と、それを支え伝えた家族の深い絆を同時に感じられる貴重な機会となります。それぞれの作品に込められたゴッホのメッセージと、それを守り抜いた家族の愛情が織りなす物語は、来場者の心に温かい感動を呼び起こすことでしょう。

この展覧会は、単なる美術鑑賞に留まらず、人間関係の尊さ、そして夢を次世代へと繋ぐことの意義を再認識させてくれます。東京都美術館企画展示室にて、ゴッホと彼を支えた家族の物語が織りなす、感動的な芸術体験にぜひ足をお運びください。

展示会情報

会場
東京都美術館 企画展示室
開催期間
2025.09.12 — 2025.12.21