アルベール・ルブール Albert Lebourg
ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢 展示作品紹介:アルベール・ルブール作「ろうそくの光で手紙を読む女性」
このたび開催される「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」において、印象派の画家アルベール・ルブールが1880年に制作した「ろうそくの光で手紙を読む女性」が展示されます。本展は、フィンセント・ファン・ゴッホとその家族が、いかにしてゴッホの作品を守り、後世に伝えてきたかに焦点を当てた、ファン・ゴッホ家のコレクションに特化した日本初の展覧会です。
作品の背景と位置づけ アルベール・ルブールは1849年にフランスで生まれ、1928年に没した印象派の風景画家です。 ルーアンで美術を学び、一時期アルジェで美術教師を務めた後、パリに戻り印象派の風景画家として活動しました。 彼は1879年と1880年の印象派展に参加し、クロード・モネやカミーユ・ピサロら同時代の画家たちと交流しています。 ルブールは特に、川岸や雪景色、夕日など、光の移ろいを捉えた風景画を得意としていましたが、本作品は室内で人物を描いた珍しい作例です。
本作品「ろうそくの光で手紙を読む女性」が制作された1880年は、フィンセント・ファン・ゴッホが画家を志した年でもあります。 この時期の印象派は、その技法が一般に受け入れられ始め、画家たちが経済的に自立し始めた「脂が乗っている時期」と評されています。 本展においてルブールの作品が展示される背景には、「フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション」と題された第2章の一部として、ファン・ゴッホ美術館の所蔵作品として収蔵されていることが挙げられます。 これは、ゴッホ兄弟が同時代の様々な作品を収集していたことを示唆しており、ルブールの作品がゴッホ家のコレクションの一部として、現代に伝えられてきた経緯を表しています。
技法と素材 本作は、1880年に黒チョークと白の油彩を用いて紙に描かれました。 ルブールは、油彩だけでなく、水彩やデッサンなど様々な技法を使いこなす画家でした。 特に、光と影の表現に優れており、黒チョークによる明暗の描写と、白の油彩による光のハイライトが、ろうそくのわずかな光によって浮かび上がる女性の姿を効果的に表現しています。 同時期の作品では、J. ポール・ゲッティ美術館に所蔵されているアルベール・ルブールの「Still Life with Candle (ろうそくのある静物)」が、同様に木炭と白の不透明水彩で描かれており、光の表現への関心が共通していることがうかがえます。
作品の意味と影響 「ろうそくの光で手紙を読む女性」という主題は、17世紀オランダ絵画、特にヨハネス・フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」などにも見られる伝統的なモチーフです。 これらの作品では、手紙を読む女性の内面や、そこに秘められた物語性が示唆されることが多く、鑑賞者に想像力を喚起させます。ルブールの作品においても、ろうそくの柔らかな光に照らされた女性が手紙に集中する様子は、静謐でありながらも個人的な感情の機微を表現していると考えられます。
この作品は、印象派の画家であるルブールが、風景画とは異なるジャンルで、光と内面の表現を探求した一例として評価できます。また、ゴッホ展において展示されることで、フィンセント・ファン・ゴッホという巨匠の作品群の中で、同時代の他の画家がどのような表現を追求していたかを知る貴重な機会を提供します。ゴッホ家が受け継いできたコレクションの一部として、この作品は、単なる一枚の絵画に留まらず、芸術家の夢とそれを支えた家族の物語の一部としても、重要な意味を持っています。