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初春の万歳と凧揚げ Two Manzai Dancers and Kite Flying Women and Children at the New Year

不詳 Unknown

「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」にて展示されている作品、「初春の万歳と凧揚げ」は、1875年(明治8年)頃に制作された不詳の浮世絵師による大判錦絵三枚続です。この作品は、ファン・ゴッホ美術館が所蔵しており、当時の日本の風俗や文化を鮮やかに伝える貴重な資料として、今回の展覧会で紹介されています。

制作背景と意図 本作品は、明治時代初期の日本における新年の祝祭の様子を描いた風俗画です。当時の浮世絵は、庶民の日常や年中行事、流行などを題材とすることが多く、人々の生活に密着した娯楽として広く親しまれていました。 「万歳」は、新年に家々を訪れて祝言を述べ、舞を披露する門付け芸で、今日の「漫才」のルーツとされる伝統芸能です。また、「凧揚げ」も正月における子供たちの遊びとして広く行われていました。 本作品は、こうした伝統的な新年の賑やかな光景を通じて、人々の喜びや幸福を表現し、鑑賞者に祝祭的な雰囲気をもたらすことを意図していたと考えられます。作者不詳であるため個人の具体的な制作意図を特定することはできませんが、当時の浮世絵が持つ社会記録的・娯楽的役割を鑑みれば、当時の新年の風物詩を記録し、広く人々に届ける目的があったと推察されます。

技法と素材 本作は「錦絵」と呼ばれる多色摺りの木版画であり、色彩豊かな表現が特徴です。 「大判錦絵三枚続」とは、縦約38センチ、横約25センチの「大判」と呼ばれる版画用紙を三枚横に連ねて一枚の絵として構成する形式を指します。これにより、より広大な画面に多様な人物や情景を描き出すことが可能となり、物語性や奥行きのある表現が生まれました。 素材には、日本の伝統的な紙である「和紙」が用いられており、そのしなやかさと耐久性が、木版画の精緻な表現を支えています。

作品が持つ意味 「初春の万歳と凧揚げ」は、明治初期の日本の豊かな風俗を伝える作品です。万歳を舞う二人組や凧揚げに興じる女性や子供たちの姿は、当時の人々の生活の喜びや、新しい年を迎える希望に満ちた空気を伝えています。また、このような作品は、当時の庶民にとって季節の移ろいや行事を身近に感じさせる役割も果たしていました。新年の門出を祝う人々の姿は、現代の私たちにも、過ぎ去りし日本の文化や人々の暮らしぶりを想像させる歴史的な意味合いを持っています。

評価と影響 本作品そのものに対する特定の評価が詳細に伝わる資料は少ないものの、浮世絵というジャンル全体が西洋美術に与えた影響は計り知れません。19世紀後半、欧州に渡った浮世絵は、フィンセント・ファン・ゴッホをはじめとする印象派やポスト印象派の画家たちに多大な影響を与えました。彼らは浮世絵の斬新な構図、大胆な色彩、平面的な表現に魅了され、自身の作品に取り入れました。 本作品がファン・ゴッホ美術館に所蔵され、今回の「ゴッホ展」で展示されていることは、ゴッホが日本の美術、特に浮世絵に強い関心を持っていたことを示唆しています。 ゴッホは、日本の浮世絵からインスピレーションを受け、日本を理想の地「ジャポネズリー」として捉えていました。この「初春の万歳と凧揚げ」のような浮世絵は、当時の日本の文化や風習をゴッホに伝え、彼の芸術的探求に影響を与えた作品群の一つとして、その価値が認められています。