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雪のパリ Paris in the Snow

ポール・ゴーガン Paul Gauguin

展覧会「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」にて展示されるポール・ゴーガンの油彩作品《雪のパリ》についてご紹介します。


ポール・ゴーガン《雪のパリ》作品解説

本作品は、1894年にフランスの画家ポール・ゴーガンによって描かれた油彩画です。ゴーガンがタヒチでの最初の滞在を終え、一時的にパリに戻っていた時期に制作されました。制作年は1894年で、キャンバスに油彩で描かれています。現在はアムステルダムのファン・ゴッホ美術館に所蔵されています。

制作背景・経緯・意図

ポール・ゴーガンは1893年8月にタヒチからフランスへと帰国し、タヒチを題材とした作品の制作を続けました。 1894年当時、ゴーガンはパリのモンパルナス地区にある建物の2階にアパルトマンを借りていました。 本作品は、そのアパルトマンの窓から見た景色を描いたものとされています。当時の気象記録から、1894年2月24日に雪が降ったことが分かっており、この頃に描かれた可能性が高いと考えられています。

ゴーガンは、この時期、ヨーロッパの伝統と、異国的な主題を探求したいという自身の願望との間で揺れ動いていたとされています。 本作品に描かれた主題は一見すると日常的な光景ですが、都市の風景が持つ孤独感や孤立感が表現されており、大都市パリにおけるゴーガン自身の経験が反映されていると解釈することも可能です。 背景にわずかに読み取れる「Neufs Occasions(新品・中古品)」と書かれた店の看板は、当時のパリの生活の一端を伝えています。

技法と素材

素材は指定の通り、油彩、カンヴァスです。 技法としては、ポスト印象派の様式で描かれており、厚塗りの絵具(インパスト)が用いられ、作品に生々しくも質感豊かな印象を与えています。 筆致は、なめらかな混色部分と、より粗いタッチのストロークが混在しており、ゴーガンの多様な表現力と実験的な姿勢が示されています。 建物や空の濃淡のある色彩は、画面に奥行きと対比をもたらしています。

作品の意味

《雪のパリ》は、雪に覆われた都市の一時的な静けさと穏やかな美しさを捉えています。 都市の建築物と木々のシルエットが雪景色の中に際立ち、手前の雪をかぶった枝々が、鑑賞者がまるで窓から景色を眺めているかのような臨場感を生み出しています。 都市の要素と自然界の相互作用が、雪の厳しさによって強調され、冷たさの中にも静寂が感じられる風景全体を一体化させています。 また、都市の構造物の鋭い角度と、画面を横切る裸の木との対比は、工業化された空間に自然が入り込む様子、あるいは1894年のパリにおける物質性やアクセシビリティに関連する社会政治的なコメントとして解釈されることもあります。

評価や影響

本作品はポスト印象派の表現を体現する作品であり、ゴーガンの芸術的軌跡を特徴づける象徴性と象徴主義という二つの潮流を内包する魅力的な例とされています。 現在はアムステルダムのファン・ゴッホ美術館に所蔵されており、ゴーガンの重要な作品の一つとして認識されています。