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雪のモンマルトル Montmartre in the Snow

オーギュスト・ルペール Auguste Lepère

ゴッホ展「家族がつないだ画家の夢」にて紹介されるオーギュスト・ルペールの油彩画「雪のモンマルトル」は、1876年から1877年にかけて制作されました。油彩、カンヴァスという古典的な技法と素材で描かれたこの作品は、雪に覆われたパリのモンマルトル地域の情景を捉えています。

作品の背景と意図 オーギュスト・ルペール(1849-1918)は、フランスの版画家、リトグラフ作家、画家、イラストレーターとして多岐にわたる活動を展開しました。彫刻と版画の訓練を積んだ後、1876年から1878年には陶器の絵付けにも携わっています。彼は、よりプリミティブでロマンティックな版画を追求し、ジャポニスムにも関心を示していました。 本作品が描かれた1870年代後半、モンマルトルはパリの郊外に位置し、まだ風車や雑木林が残る牧歌的な風景が広がっていました。しかし、同時に都市化が進み、多くの芸術家が居を構え、活気ある文化が形成されつつある時代でもありました。ルペールがこの時期に雪のモンマルトルを描いた背景には、変わりゆくパリの日常風景、特にモンマルトルの独特な雰囲気を捉えようとする意図があったと考えられます。

技法と素材 「雪のモンマルトル」は油彩、カンヴァスという伝統的な絵画技法で制作されています。ルペールは精緻な版画で知られていますが、絵画作品では厚みのある筆致や色彩を用いて、雪景色の冷たさや光の移ろいを表現したと推測されます。

作品が持つ意味 この作品は、フィンセント・ファン・ゴッホがパリに滞在し、印象派をはじめとする当時の前衛芸術に触れる以前のモンマルトルの姿を伝えるものとして、歴史的意義を持っています。モンマルトルは、ルノワールやロートレックなど多くの芸術家たちがその風俗や風景を描いた場所であり、ゴッホ自身もパリ時代にモンマルトルを描いた作品を残しています。ルペールの「雪のモンマルトル」は、そうした芸術家たちが生活し、創作活動を行った場所の情景を記録した一枚と言えます。

評価と影響 本作品「雪のモンマルトル」は、ファン・ゴッホ美術館が所蔵するコレクションの一つであり、今回の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」において、ファン・ゴッホ兄弟のコレクションの一部として展示されています。この展覧会は、フィンセント・ファン・ゴッホの作品が、弟テオ、その妻ヨハンナ、そして息子フィンセント・ウィレムといった家族によってどのように守られ、世に広められてきたかに焦点を当てています。ルペールのこの作品がゴッホ家、ひいてはファン・ゴッホ美術館のコレクションに含まれていることは、当時のパリにおける芸術家たちの交流や、ゴッホ兄弟が収集していた作品の多様性を示すものとして評価されます。ファン・ゴッホとその友人たち、あるいは同時代の画家たちの作品を合わせて展示することで、当時の芸術的潮流やゴッホが置かれていた環境をより深く理解する手がかりを提供しています。