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青楓瀑布図

円山応挙

「円山応挙―革新者から巨匠へ」展において展示される円山応挙の作品「青楓瀑布図」は、江戸時代中期の絵師、円山応挙が天明七年(西暦1787年)に描いた一幅の掛軸です。この作品は現在、サントリー美術館に所蔵されています。

制作背景と意図

本作品が描かれた天明七年は、応挙が55歳となる円熟期にあたります。 応挙は「写生」を重んじる独自の画風を確立し、常に写生帖を携帯して対象物を丹念に観察したと伝えられています。 「青楓瀑布図」の制作意図は、「涼しさ」を表現することにあったとされ、形を持たない水の一瞬を捉え、その情景に清涼感を吹き込むことを目指しました。 伝統的な日本画の題材や構図を大切にしつつも、写実性を取り入れることで、鑑賞者にその場の空気を感じさせる工夫が凝らされています。

技法と素材

「青楓瀑布図」は、紙に色彩を用いて描かれた紙本著色の軸装作品であり、縦178.0センチメートル、横91.9センチメートルの大画面で構成されています。 応挙は、静物である岩には力強く太い筆致を、植物である楓には繊細な筆致を用いるなど、対象物によって筆致を使い分ける高い技量を示しています。 滝の水は限りなく白く表現され、画面全体の色彩を静謐に保ちつつ、夏の山中に現れる清涼感を効果的に表しています。 滝壺の岩に打ち付ける水飛沫は、明るい流水の色と黒々とした岩の色のコントラストによって、滝の力強い勢いを助長させ、後の葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」における水飛沫の描写にも通じるものがあるとの指摘もあります。 画面の右上を横切る青楓の枝は、爽やかな初夏の彩りを添えています。

作品の意味

本作品は、轟く滝とその手前に描かれた楓の枝によって、清廉さと気品に満ちた自然の雄大さを表現しています。 滝の直線的な流れと、その中に力強く鎮座する大岩、そして対照的に簡素ながらも画面を引き締める楓の枝が、作品に立体感と奥行きを与えています。 この絵は単なる風景描写にとどまらず、古くから日本人が水に抱いてきた深い関心や畏敬の念をも映し出していると解釈されています。

評価と影響

円山応挙は、写生を基本としつつも、伝統的な日本の装飾画法と写生を融合させた独自の画風「円山派」を確立しました。 その革新的な画風は、数百年にわたり日本画壇の主流となり、明治以降の近代日本画の展開に大きな影響を与え、その基盤を築きました。 「青楓瀑布図」は、応挙の写実性と独創性が両立した代表作の一つとして高く評価されており、その清涼感あふれる表現は、夏の季節に鑑賞する一服の清涼剤としても親しまれてきました。