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反射式覗き眼鏡

イギリス製

反射式覗き眼鏡

本記事では、展示会「円山応挙―革新者から巨匠へ」に出展されている作品、「反射式覗き眼鏡」についてご紹介します。町田市立国際版画美術館所蔵のこの1基は、18世紀にイギリスで製作された光学機器であり、円山応挙の初期の画業、特に西洋の遠近法を取り入れた「眼鏡絵」との関わりを理解する上で重要な意味を持ちます。

製作背景・経緯・意図 「反射式覗き眼鏡」は、18世紀のヨーロッパで広く普及していた光学玩具の一種です。当時、望遠鏡や顕微鏡といった光学技術の発展は人々の視覚体験に大きな影響を与え、遠近法を用いた絵画を鑑賞するための道具としても注目されました。日本には17世紀頃からこれらの「覗き眼鏡」や、それを通して見るための「眼鏡絵」が伝来し、西洋の遠近法が紹介される契機となりました。特に18世紀後半には、遠近法を強調して描かれた絵画(眼鏡絵)を立体的に見せる装置として、広く輸入されるようになります。本作品も、このような時代背景の中で、絵画に新たな視覚効果をもたらす目的で製作されました。

技法や素材 この「反射式覗き眼鏡」は、木製の本体にレンズと鏡が組み込まれた構造をしています。絵を水平な台の上に置き、鑑賞者は本体上部に取り付けられたレンズを通して、45度傾けられた鏡に映る絵を覗き込みます。この仕組みにより、平坦な絵画がまるで奥深い空間を持つかのように立体的に見える錯視効果が生み出されます。素材としては、主に木材とガラス(レンズ、鏡)が使用されており、当時の技術水準を示す精巧な作りが特徴です。

作品の意味 「反射式覗き眼鏡」は、西洋の科学技術と芸術が融合した産物であり、当時の人々に新たな視覚体験を提供しました。特に日本の絵画史においては、伝統的な大和絵には見られなかった西洋的な遠近法の概念を導入する上で決定的な役割を果たしました。この装置を通して見ることを前提に描かれた「眼鏡絵」は、左右が反転して描かれていたり、極端な遠近法が用いられたりしており、鑑賞者には奥行きのあるリアルな空間が体験できました。

評価や影響 「反射式覗き眼鏡」と「眼鏡絵」は、円山応挙(1733-1795)の初期の画業に大きな影響を与えました。若き日の応挙は、この西洋の遠近法を駆使した「眼鏡絵」を数多く手掛け、その中で「空間」を表現する技術を習得したとされています。彼の作品に見られる奥行きや立体感の表現は、「空間の画家」と称される所以であり、その基礎は「眼鏡絵」制作を通じて培われたものです。本作品は、応挙が革新的な表現を追求し、日本画に新たな境地を開いた巨匠へと成長する過程において、西洋の光学技術がどのように影響を与えたかを示す貴重な展示品と言えます。