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狂言面 うそぶき

「狂言面 うそぶき」についてご説明します。

この作品は、「動物の仮面」という展示会で紹介された「狂言面 うそぶき」という仮面についてですね。 「うそぶき」は、狂言という日本の伝統芸能で使われる仮面の一種です。

どのような背景・経緯・意図で作られたのか?

「うそぶき」という名前は、「嘯く(うそぶく)」、つまり口をすぼめて口笛を吹く、あるいは大声で叫ぶ、とぼけるといった意味に由来しています。この面は、昆虫や植物、魚類などの精霊、あるいは亡霊、かかし、時には罪人といった、人間以外の存在や異形の役柄を演じる際に用いられてきました。 狂言の登場人物は、人間味あふれる庶民が中心ですが、物語によっては動物の精や神など、人間ではない存在も登場します。そうした際に、役柄を分かりやすく、かつ滑稽に表現するために「うそぶき」のような仮面が作られました。特に、「動物の仮面」という展示会の文脈では、動物を擬人化したり、動物の精として登場させたりする意図が込められていると言えます。人々は、芸能を通して動物の役を演じることや、登場する動物に親しみを抱いていたと考えられます。 口をすぼめた表現は、伎楽面や舞楽面にも見られる古い仮面の形式を受け継いでいるとされており、田楽や猿楽の面にも同様の表現があったと考えられます。

どのような技法や素材が使われているのか?

「狂言面 うそぶき」は、一般的に木を彫って作られ、その上から彩色が施されています。 面には顔料が塗られ、これには膠(にかわ)の水溶液が混ぜられていることもあります。 眉や髭には、毛が植えられているものもあり、これによって老いた様子を表現することもあります。 具体的な「うそぶき」の寸法としては、高さ約十九・四センチメートル、幅約十四・二センチメートルといった例が見られます。

どのような意味を持っているのか?

「うそぶき」の面は、飛び出した目玉を斜め下向きにきょろりと向け、口笛を吹くように口を尖らせたユーモラスな表情が特徴です。 この表情は、しばしば日本の民間信仰における「ひょっとこ面」に似ていると言われます。 その意味するところは、滑稽さやとぼけた感じ、あるいはどこか憎めない愛嬌のある異形の存在を象徴しています。たとえば、狂言の演目「蚊相撲」では、相撲好きの大名の生き血を吸う蚊の精にこの面が使われます。 他にも、「瓜盗人(うりぬすっと)」の案山子や、「蛸(たこ)」の蛸の霊など、多様な役柄に用いられ、それぞれの役柄にふさわしい印象を与えます。 総じて、「うそぶき」は、狂言の持つ笑いや人間描写、そして非日常的な存在を表現するための重要な道具であり、観客に親しみと笑いをもたらす役割を担っています。

どのような評価や影響を与えたのか?

「うそぶき」は、その特徴的な表情から、日本の伝統芸能である狂言を象徴する面の一つとして広く知られています。そのひょうきんで親しみやすい表現は、能面が持つ深遠さや荘厳さとは異なる、狂言独自のユーモアと庶民性を際立たせています。 「ひょっとこ面」との類似性も指摘されており、民俗芸能や大衆文化における道化役のイメージにも影響を与えていると考えられます。 伝統的な狂言面としての歴史的な価値はもちろんのこと、現代においても多くの面打ち師によって模作が作られ、その技法や精神が受け継がれています。 展示会「動物の仮面」で紹介されることで、「うそぶき」が持つ動物の精霊としての側面や、人間と自然、あるいは異界との関わりを表現する日本の芸能の奥深さを、現代の観客に伝える役割も果たしています。