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狂言面 狐

「春章」焼印

作品名「狂言面 狐」、アーティスト名「春章」の焼印、展示会タイトル「動物の仮面」について、以下の内容を説明します。


狂言面「狐」は、日本の伝統芸能である狂言で使用される面の一つです。狂言は、能とともに能楽を構成する喜劇的な演目で、多くの場合、素顔で演じられますが、神や鬼、動物の精霊、特定の人物などを演じる際には面が用いられます。狂言面には、その役柄を特徴づける様々な種類があります。

この「狐」の面は、狂言の中でも特に重要な演目である「釣狐(つりぎつね)」の後シテ(主役)にのみ用いられます。 「釣狐」は、猟師に一族を捕らえられた老狐が僧に化けて猟師に殺生をやめるよう説得しますが、帰り道で好物の餌が仕掛けられた罠に、それと知りながらもかかってしまうという物語です。 狂言師の修行は「猿にはじまって狐に終わる」と言われるほど、「釣狐」は狂言役者にとって集大成ともいえる大曲であり、この面は役者の技量と精神性が凝縮される象徴的な意味合いを持っています。

面の制作には、一般的にヒノキなどの木材が用いられます。木地を彫り出した後、胡粉(ごふん、カキやホタテの貝殻を砕いたもの)と膠を混ぜた下地を塗り重ね、肌合いを出します。古い面では、木地に和紙を貼ってから胡粉下地を塗る「紙彩色」という技法も用いられました。 その後、顔料を混ぜた胡粉を塗り、さらに落ち着いた色合いを出すために墨などを用いた液で古色を施します。唇には朱、目には墨を入れ、眉や髪の毛を描き込みます。面によっては、目や歯に金属製の金具を嵌め込んだり、馬の鬣(たてがみ)や尾の毛を植え付けて髪や髭を表現したりすることもあります。 面打ちは、木の中に完成された面の姿を見出し、余分なものを削り取っていく作業であり、技術は表現の手段であって、心理や思考が優先されるとされます。

「春章」という焼印が押されたこの狂言面「狐」の具体的な制作背景や経緯、意図については、現在得られる情報からは詳細を特定できませんでした。一般的に、能面や狂言面は役柄の感情を曖昧に表現し、演者の動きや光の加減によって表情が変化するように作られています。これは「中間表情」と呼ばれ、物語の中で変化する主人公の心情を一種類の面で表現するための工夫です。 しかし、鬼神や動物の精霊のような超越したキャラクターに用いられる面には、激しさを切り取った「瞬間表情」を持つものもあります。 狂言面「狐」も、精霊としての狐の特性や「釣狐」の物語性を踏まえ、特定の表情が込められていると考えられます。

この作品がどのような評価や影響を与えたかについても、「春章」という個人または工房に関する具体的な情報が見当たらなかったため、詳細を述べることはできません。しかし、狂言面「狐」自体は、「釣狐」という演目の重要性から、狂言の世界において極めて高く評価される面の一つです。