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舞楽面 崑崙八仙

「舞楽面 崑崙八仙」について、詳細に説明いたします。

この作品は、 どのような背景・経緯・意図で作られたのか? この「舞楽面 崑崙八仙(ぶがくめん ころばせ)」は、日本の伝統芸能である舞楽(ぶがく)で使われる仮面の一種です。舞楽は、宮廷や寺社で演じられた舞と音楽の総称で、大陸から伝わった芸能が日本で独自の発展を遂げたものです。この仮面を用いる舞「八仙(はっせん)」、または「崑崙八仙」という演目は、中国の伝説に由来するとされています。崑崙山(こんろんさん)に住む八人の仙人(はっせんにん)が、帝王の徳を慕って中国にやってきて、音楽を奏で舞ったという説に基づいています。また、この舞が冠鶴(かんむりつる)が舞う姿を模していることから、「鶴舞(つるまい)」という別名も持っています。仮面は、古くから装着することで、その仮面が象る神や精霊、動物そのものに人格が変化すると信じられ、宗教的儀式や舞踏、演劇などで用いられてきました。この面も、舞楽という神聖な儀式の中で、演者が仙人や鶴へと変身する意図で作られました。

どのような技法や素材が使われているのか? 「舞楽面 崑崙八仙」は、主に木製で作られています。特に平安時代の作品には、ヒノキ材を一本の木から彫り出して作られたものが見られます。内部は刳り抜かれていないものもあります。表面には彩色が施されていましたが、現存する古い作品では、彩色の大部分が剥落し、素地が露出しているものも少なくありません。目の部分には漆箔(漆と金箔)が残されていることがあります。目は彫眼(ちょうがん)という技法で彫り出されています。眉には植毛されていた痕跡が残るものもあります。 面の形状は、鳥の顔を模しており、尖った嘴(くちばし)の先に小さな鈴が吊り下げられています。この鈴の音色は鶴の鳴き声を表すとされています。目は金色で、紺色の漆が塗られている面もあります。 舞楽の装束としては、独特なものが用いられます。薄緑青色や白羽二重地に金銀色の大きな鯉が刺繍され、その上から濃紺の網がかけられた袍(ほう)という上着を着用します。襟や袖、裾には四手雲(しでぐも)という文様が施された金襴(きんらん)が用いられ、裏地は浅黄色の平絹などです。袴は、両練紋固地綾織(りょうねりもんかたじあやおり)に霰(あられ)や四手雲の地紋があり、裏地は紅色の平絹です。足元には白絹糸で作られた糸鞋(しかい)を履き、底は羊の柔らかな革、中底は畳表でできています。頭には、和紙製で胡粉(ごふん)絵具を塗った、虹色の扇形をした冠(かんむり)を被ります。これは鶴の羽根を広げた姿を象徴しており、青色の組紐で顎に結びつけられます。

どのような意味を持っているのか? この作品、すなわち「舞楽面 崑崙八仙」とその舞は、中国の崑崙山に住む八人の仙人が皇帝の徳を慕い、来朝して舞ったという伝説を表現しています。この八仙は道教における代表的な仙人であり、日本の七福神のように厚く信仰され、縁起の良い題材として様々な芸術のモチーフとなってきました。 また、この面と舞は、冠鶴が舞う姿を象っていることから「鶴舞」とも呼ばれ、鶴の優雅なイメージと結びついています。面が口にくわえる鈴の音は鶴の鳴き声を表し、頭部の扇形の冠は鶴の羽根を表現しています。全体として、神秘的な仙人の世界と、長寿や吉祥の象徴である鶴の姿を重ね合わせ、福を招く意味合いを持っています。

どのような評価や影響を与えたのか? 「舞楽面 崑崙八仙」は、日本の伝統芸能における重要な仮面として高い評価を受けています。特に平安時代に制作された「舞楽面 崑崙八仙」(長久3年・1042年)は、奈良の手向山八幡宮に所蔵され、国の重要文化財に指定されています。奈良国立博物館にも12世紀平安時代の「舞楽面 崑崙八仙」が収蔵されており、その表情が、鶴の優雅なイメージとはかけ離れた目をむいたユーモラスな味わいを持つと評されています。 また、近年では2025年8月26日から東京国立博物館で開催される特別展示「動物の仮面」において、主要な出品作品の一つとして紹介されています。この展示では、鳥を擬人化した舞楽面の崑崙八仙が、猿や狐などの写実的な動物面とともに並べられ、日本の芸能において人々がいかに動物を演じることを楽しみ、動物に親しみを感じていたかを示す象徴的な作品として位置づけられています。これは、日本の仮面文化、ひいては芸能史全体において、「舞楽面 崑崙八仙」が多岐にわたる表現を持つ動物仮面の一つとして、その造形的な魅力と文化的な意味合いを現代に伝えていることを示しています。