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三人の女

Pablo Picasso

パブロ・ピカソの「三人の女」について、詳細にご説明します。

この作品は、千九百二十二年に制作されたエッチングによる版画で、国立西洋美術館に所蔵されています。サイズは縦十七・五センチ、横十三センチの銅版画です。

どのような背景・経緯・意図で作られたのか

一九二〇年代のピカソは、かつてのキュビスムの革新的な様式から転換し、「新古典主義の時代」と呼ばれる時期にありました。 これは、彼がロシア・バレー団の仕事でイタリアのローマを訪れた際、古代ローマ帝国の彫刻やルネサンス美術の堂々とした作品に大きな影響を受けたことに起因します。 また、当時の妻であるロシア人バレリーナのオルガ・コクロヴァが、より分かりやすく美しい、具象的な表現を好んだことも、ピカソが古典主義的な作風へと回帰する要因の一つだったと言われています。 このような背景から、「三人の女」は、古典的な美を追求するピカソの意図が反映された作品として制作されました。

どのような技法や素材が使われているのか

この作品は「エッチング」という銅版画の技法を用いて制作されています。 エッチングは、まず銅などの金属板に耐酸性のワックスを塗布し、その上から鋭利な針で絵の線を描き、ワックスを削り取って金属面を露出させます。 その後、金属板を酸に浸すことで、針で描かれた部分だけが腐食され、溝が作られます。 この溝にインクを詰め、湿らせた紙を置いて高い圧力をかけてプレスすることで、線が紙に転写され、版画が完成します。 この技法ならではの繊細で端正な線描が、作品に穏やかで気品あふれる印象を与えています。

どのような意味を持っているのか

「三人の女」という主題は、ヨーロッパ美術において古くから伝わる伝統的なテーマである「三美神」を描いたものと解釈されています。 三美神は、優雅さや美しさを擬人化したもので、「美」「欲望」「充足」、あるいは「純潔」「美」「愛」といった概念を象徴すると言われています。 この作品における三人の女性像は、この時代のピカソが追求した、理想化された古典的な女性像を表していると考えられます。

どのような評価や影響を与えたのか

「三人の女」は、新古典主義時代のピカソを代表する気品あふれる傑作として評価されています。 ピカソは生涯にわたり約二千点もの版画を制作しましたが、この作品に見られるような銅版画の特性を活かした端正な線描は、彼の多岐にわたる表現力を示しています。 この作品は国立西洋美術館に所蔵されており、ピカソの画風の変遷を理解する上で重要な作品の一つとして、多くの人々に鑑賞されています。