アブラハム・ブルーマールト / Abraham Bloemaert
アブラハム・ブルーマールト作「牛の習作」について、詳しくご説明いたします。
1.どのような背景・経緯・意図で作られたのか? アブラハム・ブルーマールト(1566年頃 - 1651年)は、17世紀オランダの「黄金時代」を代表する画家であり、版画家、素描家でもありました。彼は歴史画や風景画で特に知られていますが、数多くの動物の習作も残しています。
この「牛の習作」は、画家が後の大規模な作品制作のために、動物の形態や解剖学を詳細に観察し、記録することを目的として描かれたものです。当時の芸術家にとって、自然や動物の入念な習作は、より写実的で説得力のある絵画を制作するための重要な基礎訓練でした。 ブルーマールトは、自然界を写実的に描くことに注力しており、特に農村生活を好んで描いたとされています。 彼は、自身が設立した素描学校で多くの弟子を指導しており、素描教育のための教本「線描帖(Tekenboek)」も出版するほど、素描の重要性を認識していました。 この習作も、そのような教育や自身の制作過程の一部として描かれたと考えられます。素描は、絵画の最終的な構図を「発明(invenzione)」し、「デザイン(disegno)」する上で不可欠な要素でした。
スウェーデン国立美術館がこの作品を所蔵している背景には、18世紀にスウェーデンの大使カール・グスタフ・テッシンの収集品をはじめ、3世紀にわたる王室の収集や、17世紀にスウェーデンに移住したオランダやフランドルからの移住者による寄贈などがあります。 スウェーデン国立美術館は、ルネサンスから1900年までの絵画、彫刻、素描、版画を50万点も所蔵しており、特に17世紀のオランダ絵画のコレクションが充実しています。
2.どのような技法や素材が使われているのか? この作品は「赤チョーク、ペン、褐色インク、白のハイライト、枠線、紙」という素材と技法で制作されています。
これらの複合的な技法は、ブルーマールトが光と影、そして量感を巧みに表現し、被写体である牛の生命力を捉えるために用いたものであり、当時の素描における高度な表現力を示しています。
3.どのような意味を持っているのか? この「牛の習作」は、単体で特定の象徴的な意味を持つというよりは、主に機能的な意味を持つ作品です。
4.どのような評価や影響を与えたのか? アブラハム・ブルーマールトは、16世紀末から17世紀半ばにかけてのオランダ絵画において主要な画家のひとりであり、その名声は18世紀まで続きました。 彼の素描は、古今の素描収集家や主要な版画室のキュレーターによって熱心に求められ続けています。 「牛の習作」のような動物の素描は、当時の画家の工房における実践的な教育と制作において重要な役割を担っていました。ブルーマールトは、多くの画家を育てた優れた教師としても知られており、彼の素描は後進の画家たちにとって模範となり、写実的な動物描写の発展に寄与しました。 彼の作品は、マニエリスムからより自然主義的な表現へと移行するオランダ美術の潮流の中で、特に農村の生活や風景における動物の描写にリアリズムをもたらす影響を与えました。
この習作は、芸術家の制作過程における素描の重要性、そして観察に基づいた描写がいかに芸術作品の質を高めるかを示す貴重な例として評価されています。スウェーデン国立美術館に所蔵されていることは、その芸術的・歴史的価値の高さを示すものでもあります。