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都市の眺望(アルネム?) / Landscape with a View of a City (Arnhem?)

ピーテル・デ・ウィット / Pieter de With

ピーテル・デ・ウィットの作品「都市の眺望(アルネム?)」について詳細にご説明いたします。

この作品は、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」という展示会で紹介されました。スウェーデンのストックホルムにあるスウェーデン国立美術館は、ヨーロッパでも有数の古い美術館であり、その素描コレクションは世界的に見ても質、量ともに充実していることで知られています。素描作品は光や振動、環境の変化に弱いため、海外で所蔵されているものがまとめて日本で公開されることは非常に稀であり、この展覧会は約80点もの名品が一堂に会する貴重な機会となりました。

作品名に「アルネム?」とあるように、この素描はオランダ中部の都市アルネム近郊の風景を描いたものと考えられています。アルネム周辺の風景画は、緩やかな起伏のある畑が谷間に広がり、遠景には教会の尖塔を持つ都市が見えるといった描写が一般的です。

作者のピーテル・デ・ウィットは、17世紀半ば頃、具体的には1650年から1689年頃に活動したオランダの風景画家、エッチング作家、素描家です。 彼の生涯についてはほとんど知られていませんが、1652年頃には巨匠レンブラントのもとで学んだ可能性も示唆されています。

「都市の眺望(アルネム?)」の制作背景や意図について、この作品に特化した記録は残念ながら見つかっていません。しかし、17世紀のオランダ、いわゆるオランダ黄金時代においては、風景画が非常に発展し、多くの画家が身近な国土の景観や都市の眺めを主題として描きました。デ・ウィットもそうした時代の潮流の中で、身の回りの風景を観察し、それを紙の上に定着させるという意図でこの作品を制作したと考えられます。当時の素描は、絵画制作のための習作としてだけでなく、それ自体が独立した芸術作品としても評価されていました。この作品も、移り変わる光や空気感、遠近感といった風景の要素を、速写性と表現力を兼ね備えた素描という形で捉えようとした画家の試みと言えるでしょう。

技法と素材については、作品詳細に明記されている通り、「ペン、褐色インク、水彩、枠線、紙」が使われています。 [作品詳細] これは当時の素描において一般的な組み合わせであり、ペンとインクで主要な線や輪郭を描き、その上から水彩で色彩や明暗、大気感を加えて表現する方法です。褐色インクは、単色でありながらも深みと温かみのある表現を可能にし、水彩は透明感のある描写で風景の広がりや光の効果を効果的に表すことができます。画面を囲む「枠線」は、作品の構図を引き締め、鑑賞者の視線を誘導する役割を果たします。紙に描かれていることから、手軽に制作でき、持ち運びにも適していたため、屋外での写生などにも用いられた可能性があります。

この作品がどのような意味を持っているかについても、具体的な記録はありませんが、当時のオランダの風景画が持つ一般的な意味合いから推測できます。オランダの画家たちは、自国の豊かな自然や、発展する都市の景観に深い愛着と誇りを持っていました。デ・ウィットの「都市の眺望(アルネム?)」も、単なる風景の記録に留まらず、故郷の景色の美しさ、そこに息づく人々の生活、そして移りゆく時間といったものへの、画家の眼差しが込められていると考えられます。また、当時盛んであった旅の記念や、景色の記録といった実用的な意味合いも持ち合わせていたかもしれません。

作品の評価や影響について、ピーテル・デ・ウィットはレンブラントのような著名な巨匠ではないため、この個別の素描作品が後世に与えた具体的な影響が詳細に語られることは稀です。しかし、スウェーデン国立美術館が所蔵し、世界最高峰と称される素描コレクションの一部として、そして今回のルネサンスからバロック期の名品を集めた重要な展覧会に選ばれていること自体が、この作品の芸術的価値と評価の高さを物語っています。 彼の作品は、17世紀オランダの素描が持つ多様な表現や、風景画というジャンルの一端を示すものとして、美術史的な意義を持っています。そして、巨匠たちの作品とともに展示されることで、当時の画家たちの創造の過程や、素描という表現形式の持つ奥深さを現代の鑑賞者に伝えています。