ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルト / Johann Heinrich Schönfeld
ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトの「頭部を右に向けた男性」について、詳細を説明します。
1.作品の背景、経緯、意図 ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトは、17世紀ドイツのバロック様式の画家であり、版画家、素描家としても活動しました。金細工師の息子としてビーベラハ・アン・デア・リスに生まれ、メミンゲンで画家のカスパー・ジッヘルバインから絵画を学びました。その後、シュトゥットガルトやバーゼルへ旅をしています。三十年戦争の混乱を避けるため、1633年にイタリアへ渡り、ローマやナポリで約18年間修行を積みました。このイタリア滞在中に、プッサンやサルト・ローザ、ジャック・カロといったイタリアの画家や、フランドル、オランダの風景画家の影響を受け、自身のスタイルを確立していきました。特に、カロのエッチングから影響を受けた、細長く小さな頭部の人物描写や線描の技法が特徴とされます。1652年にはドイツに戻り、アウグスブルクに定住して市民権と親方の権利を得て工房を開き、数多くの祭壇画や神話画、風俗画を制作しました。彼は、晩年の12年間は特に宗教画に力を入れました。
「頭部を右に向けた男性」のような素描は、当時の画家たちにとって、絵画や彫刻の構想を練るための準備段階の作品、あるいは習作として制作されることが一般的でした。また、素描自体が独立した芸術作品として鑑賞されることもありました。この作品も、シェーンフェルトが何らかの絵画や構図のために男性の頭部の表情や動きを研究する目的で描かれた可能性があります。彼の作品には、歴史画や神話画が多く含まれており、登場人物の多様な表情やポーズを描き出すための習作として、このような素描が多数制作されたと考えられます。
2.技法や素材 この作品には「黒チョーク、白チョークによるハイライト、青色の紙」という素材が用いられています。 黒チョークは、細やかな線から広い面まで、明暗の階調を表現するのに適しており、力強くも繊細な描写が可能です。白チョークによるハイライトは、特に青色の紙の上で効果を発揮します。青色の紙は中間調の役割を果たし、黒チョークの陰影と白チョークの光の表現を際立たせることで、立体感と奥行きのある描写を生み出します。この組み合わせは、ルネサンスからバロック期にかけて、特に素描において好んで用いられた技法の一つです。青い紙を用いることで、画面全体に落ち着いた雰囲気を与えつつ、明暗のコントラストを強調し、人物の存在感を際立たせています。素描は、作家の手の跡がより直接的に感じられ、制作の試行錯誤の過程を垣間見ることができる点が魅力とされています。
3.作品が持つ意味 この「頭部を右に向けた男性」が具体的にどのような物語や人物を表現しているのか、特定の情報は見当たりませんが、シェーンフェルトが手掛けた多くの歴史画や宗教画、神話画の登場人物の習作として捉えることができます。男性の頭部が右に向けられているという描写は、鑑賞者の視線を誘導し、その先の物語や感情を想像させるきっかけとなります。例えば、何かに驚いているのか、誰かに呼びかけられているのか、あるいは遠くを見つめているのかなど、様々な解釈が可能です。バロック期の絵画は、劇的な感情表現や躍動感のある動きを重視するため、このような人物の表情やポーズの習作は、完成作品に深みを与える上で不可欠な要素でした。
4.作品の評価や影響 ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトは、生前から18世紀にかけてドイツで絶大な評価を受けていた画家です。 17世紀後半のドイツにおいて最も重要なバロック画家の一人とされており、多くの南ドイツの教会のために祭壇画を制作しました。 彼の作品は、その繊細な色彩と軽やかな筆致から、ドイツのロココ美術の要素を先取りしているとも評されています。 イタリアでの修行を通じて、マニエリスム後期の様式と初期ロココの中間に位置する独自のバロック様式を確立しました。
今回の「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」は、ルネサンスからバロックまでの素描作品を紹介するもので、スウェーデン国立美術館の素描コレクションは、質、量ともに世界最高峰の一つとされています。 通常、海外の素描作品が日本でまとめて公開されることは稀であり、今回の展示はシェーンフェルトのような巨匠たちの素描作品を間近で鑑賞できる貴重な機会となります。 「頭部を右に向けた男性」も、シェーンフェルトの卓越した素描家としての技術と、その創造の過程を直接的に感じさせる作品として、来場者に深い感動を与えることでしょう。彼の作品は、エルミタージュ美術館やルーヴル美術館、アルベルティーナ美術館など、世界の主要な美術館に所蔵されており、その芸術的価値は国際的に高く評価されています。