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座っている若い女性の頭部 / Head of a Young Woman Sitting

ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルト / Johann Heinrich Schönfeld

ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトの作品「座っている若い女性の頭部」について、詳細を説明します。

1.背景、経緯、意図

この作品は、スウェーデン国立美術館が所蔵する素描コレクションの一部であり、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」という展示会で紹介されています。スウェーデン国立美術館は、ヨーロッパで最も古い美術館の一つであり、その素描コレクションは世界的にも質・量ともに充実していることで知られています。素描は、環境の変化や光、振動の影響を受けやすいため、海外の作品がまとめて展示されることは非常に貴重な機会とされています。

作者のヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトは、一七世紀ドイツの画家です。三十年戦争の混乱を避けるため、一六三三年にイタリアへ渡り、ローマやナポリで修行を積みました。その後、ドイツに戻り、アウグスブルクで工房を開きました。彼は、宗教画、歴史画、風俗画のほか、版画や素描も手がけ、一七世紀後半のドイツにおいて重要な画家として評価されています。

素描作品は、絵画や彫刻の構想を練るための下絵、あるいは完成作品の記録として制作されることがありますが、それ自体が一つの完成された芸術作品としても見なされます。この「座っている若い女性の頭部」のような作品は、人物の表情や解剖学的な構造、光の当たり方などを研究する目的で描かれた習作である可能性が高いです。また、素描は画家の思考の過程や技術を直接的に感じられるため、鑑賞者に画家の創造の場に立ち会っているような臨場感を与えます。

2.技法や素材

この作品には、「黒チョーク、白チョークによるハイライト、青色の紙」という技法と素材が用いられています。

まず、青色の紙は、ルネサンス期からバロック期にかけて広く用いられた画材です。 この中間の色調を持つ青い紙は、絵画におけるキアロスクーロ(明暗対比)の技法とよく似た効果を生み出すことができます。つまり、紙の色自体を中間のトーンとして利用することで、黒いチョークで暗い影を表現し、白いチョークで明るいハイライトを加えることが可能になります。

チョークは、バロック期において、その柔らかく表現豊かな特性から、より直接的で感情豊かな表現に適した画材でした。 特に、黒と白のチョークを青い紙の上で使う技法は、三次元の人物像を平面上に描く際に、その量感や立体感を表現するのに理想的でした。白いチョークで光の当たる部分を強調することで、対象が浮き上がるような視覚効果が生まれます。 これは、光の領域が薄い絵の具の層と対比されて彫刻的な印象を与える、バロック絵画の技法とも共通するアプローチです。

3.意味

「座っている若い女性の頭部」という作品名が示すように、この素描は若い女性の頭部に焦点を当てた習作と考えられます。このような頭部研究は、画が人物の表情、顔の構造、そして光が顔にどのように当たるかを深く探求するためのものです。

黒と白のチョークと青色の紙を用いた技法は、作品に強い明暗のコントラスト(キアロスクーロ)をもたらし、立体感とドラマ性を強調しています。この表現方法は、バロック美術の特徴の一つであり、感情や動きを力強く伝える上で重要な役割を果たしました。 この作品は、シェーンフェルトが人物表現における光と影の効果、そして人間性の深みを追求する過程で生み出されたものと言えるでしょう。

4.評価や影響

ヨハン・ハインリヒ・シェーンフェルトは、一七世紀後半のドイツ美術において重要な画家の一人として評価されています。 彼の作品は、イタリアでの修行を通じて培われたバロック様式の影響を色濃く示しており、ドイツにおけるバロック美術の発展に貢献しました。

この「座っている若い女性の頭部」のような素描は、画家の技術、構想力、そして制作過程における試行錯誤を直接的に示す貴重な資料です。 黒と白のチョークを中間の色調の紙に用いる技法は、ルネサンス期からバロック期にかけて多くの巨匠たちに採用され、人物研究や立体表現において絶大な影響を与えました。この技法は、明暗表現の基礎となり、後の美術史における表現の幅を広げることに繋がりました。 スウェーデン国立美術館がこの作品を重要な素描コレクションの一部として展示していること自体が、シェーンフェルトの芸術的価値と、この作品が持つ美術史的意義の高さを示しています。