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聖母被昇天 / The Assumption

クロード・ジェレ / Claude Gellée

クロード・ジェレ、通称クロード・ロランによる作品「聖母被昇天」についてご説明いたします。

作品詳細: ペン、褐色インク、褐色の淡彩、紙

この作品は、スウェーデン国立美術館の素描コレクション展で展示されている、紙にペンと褐色インク、褐色の淡彩で描かれた「聖母被昇天」という素描です。

どのような背景・経緯・意図で作られたのか? クロード・ジェレ、またはクロード・ロランは、17世紀のフランス・バロック時代の画家で、生涯のほとんどをローマで過ごし、風景画に特化した最も初期の重要な芸術家の一人として知られています。彼は、風景画に聖書や古典神話の小さな人物像を追加することで、より高尚な歴史画へと昇華させることを得意としました。彼の作品は、光の効果と調和の取れた構図に重点を置いており、自然そのものよりも美しく秩序だったイメージを作り出すために、日々屋外で写生を行っていました。この「聖母被昇天」も、彼が風景の中に宗教的な物語を組み込むという意図のもとに描かれたものと考えられます。ローマというカトリックの中心地で活動していた彼は、宗教的な主題の需要にも応えていたでしょう。

どのような技法や素材が使われているのか? この作品は「ペン、褐色インク、褐色の淡彩、紙」という技法と素材で制作されています。クロード・ロランは、ペンと単色の水彩の「ウォッシュ」を用いた素描を多作しました。通常は褐色ですが、時には灰色も使われています。下書きにはチョークが、ハイライトには様々な素材の白が使われることもありましたが、他の色は稀でした。彼は、現場で作成された風景スケッチを数多く残しており、これらは他の芸術家にも大きな影響を与えました。今回の「聖母被昇天」も、このような彼の素描作品群の一部であり、素早く力強い筆致で描かれたと考えられます。彼の素描は、しばしば絵画の準備段階としても用いられ、彼の絵画作品を記録するために制作された「真実の書(Liber Veritatis)」と呼ばれる195点の素描集も現存しています。

どのような意味を持っているのか? 「聖母被昇天」は、キリスト教の教義において、聖母マリアが地上での生涯を終えた後、霊魂と肉体ともに天国に上げられたことを意味します。この主題は、特にカトリック教会において重要な祝日であり、数多くの芸術作品の題材となってきました。クロード・ロランの作品では、人物はしばしば絵画の片隅に描かれ、絵の真の主題は陸、海、空といった風景そのものであるとされています。しかし、「聖母被昇天」のような宗教的な物語の人物像が加わることで、単なる風景画ではなく、精神的、物語的な意味合いを持つ作品となります。マリアの被昇天という奇跡的な出来事を、クロード・ロランがどのように理想化された風景の中に表現したのかが、この作品の重要な意味合いとなります。

どのような評価や影響を与えたのか? クロード・ロランは、1630年代後半までにはイタリアを代表する風景画家としての地位を確立し、高額な報酬を得ていました。彼は風景画に太陽の光を取り入れた先駆者であり、その光の表現は特筆すべき点です。彼の作品は、生前も死後も、風景画や庭園設計に大きな影響を与えました。ジョン・コンスタブルはクロード・ロランを「世界がこれまでに見た中で最も完璧な風景画家」と評し、彼の風景画には「すべてが愛らしく、穏やかで、心地よさと静けさがあり、心の穏やかな陽光がある」と述べています。彼の素描は、その美しさから高く評価され、他の多くの芸術家にも影響を与えました。この「聖母被昇天」の素描も、彼の卓越した描写力と、光と構図に対する深い理解を示すものとして、後世の芸術家たちに鑑賞され、影響を与え続けていることでしょう。