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両手を握り合わせた女性のやや右から見た像 / Woman with Clasped Hands, Semi-profile Right

ヤコボ・パルマ・イル・ジョーヴァネ (本名ヤコポ・ネグレッティ) / Jacopo Palma il Giovane (Jacopo Negretti)

スウェーデン国立美術館に所蔵されているヤコボ・パルマ・イル・ジョーヴァネの「両手を握り合わせた女性のやや右から見た像」について、詳しくご説明します。

この作品は、スウェーデン国立美術館が誇る世界最高峰の素描コレクションから選ばれた一点で、「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」にて展示される貴重な機会となります。素描は光や環境の変化に非常に敏感なため、海外のコレクションがまとめて公開されることは稀であり、この展覧会は当時の芸術家たちの創造の過程を直接垣間見ることができる貴重な機会を提供します。

どのような背景・経緯・意図で作られたのか この作品の制作意図は、ルネサンスからバロックにかけての素描に共通する目的に鑑みることができます。当時の芸術家にとって、素描は絵画や彫刻といった完成作品の構想を練るための習作や下絵、あるいは完成作品の記録として、多岐にわたる役割を担っていました。また、それ自体が一つの独立した芸術作品として評価されることもありました。

ヤコボ・パルマ・イル・ジョーヴァネ(本名ヤコポ・ネグレッティ、1549-1628年)は、大叔父であるパルマ・イル・ヴェッキオと区別するため、「若きパルマ」と呼ばれたイタリアの画家です。彼はヴェネツィアで修業を積み、ローマに留学してラファエロやティントレット、ティツィアーノといった巨匠たちの作品から学びました。特にティツィアーノの未完の作品を完成させるなど、ヴェネツィア派の重要な画家として活躍しました。

「両手を握り合わせた女性のやや右から見た像」は、おそらくパルマ・イル・ジョーヴァネが、より大きな絵画の人物像を制作する際の習作、または人物のポーズや表情を研究するために描かれたものと考えられます。このような人物素描は、画家が人体の構造や衣服のひだ、光の当たり方などを探求する上で不可欠なプロセスでした。

どのような技法や素材が使われているのか この作品は、「黒チョーク、白チョークによるハイライト、枠線、青色の紙」という素材と技法が用いられています。 黒チョークは、対象の輪郭や質感、明暗を表現するのに適しており、デッサンにおいて基本的な描画材料です。白いチョークは、特にハイライト、つまり光が当たって明るく見える部分を表現するために使用されました。これにより、作品に立体感と奥行きが与えられ、光の効果が強調されます。 青色の紙は、当時の素描でしばしば使われた素材で、中性的な色調が黒チョークの暗い線と白チョークの明るいハイライトを際立たせ、全体のトーンに深みと豊かさをもたらします。

どのような意味を持っているのか この素描が特定の神話や聖書の物語、あるいは肖像画の一部として明確な意味を持つかどうかは、現時点では詳らかではありません。しかし、女性が両手を握り合わせたポーズは、祈り、思案、悲嘆、あるいは静かな瞑想など、様々な内面的な感情を暗示する可能性があります。芸術家はしばしば、こうしたポーズを通じて人間の普遍的な感情や心理状態を探求しました。

どのような評価や影響を与えたのか 「両手を握り合わせた女性のやや右から見た像」という個別の作品に対する具体的な評価や影響については、詳細な記録を見つけることは困難です。しかし、パルマ・イル・ジョーヴァネ自身は、ティツィアーノの死後、ヴェネツィア派を代表する画家の一人として高く評価されており、多くの祭壇画や神話画、肖像画を手がけました。彼の素描は、ヴェネツィア派の色彩豊かな絵画制作の基礎を支え、後世の画家たちにも影響を与えたと考えられます。

素描は、芸術家の思考の過程、試行錯誤の跡が最も直接的に表れる作品であり、鑑賞者はまるで画家の創造の場に立ち会っているかのような臨場感を味わうことができます。この作品もまた、パルマ・イル・ジョーヴァネの卓越した描画技術と、人物表現に対する深い洞察力を示していると言えるでしょう。