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空飛ぶ雀 / Flying Sparrow

ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ / Giovanni da Udine

この作品は、スウェーデン国立美術館が所蔵する素描コレクションの一点、「空飛ぶ雀」と題されたジョヴァンニ・ダ・ウーディネの素描です。

どのような背景・経緯・意図で作られたのか ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ(1487-1564)は、ルネサンス期イタリアの画家であり建築家で、特にラファエロ(1483-1520)の最も優れた協力者として知られています。彼は1515年頃からラファエロの工房で働き、1520年にラファエロが亡くなるまで、ローマのヴィラ・ファルネジーナやヴァチカン宮殿の装飾といった重要なプロジェクトに参加しました。 彼の専門分野は、古代ローマ皇帝ネロの黄金宮殿(ドムス・アウレア)の再発見によってインスピレーションを得たグロテスク装飾でした。ジョヴァンニ・ダ・ウーディネはラファエロと共にその古代遺跡を訪れ、そこに描かれた幻想的な植物や動物の装飾を研究しました。 この「空飛ぶ雀」は、そうした彼の自然観察に基づく描写力と、グロテスク装飾における動植物の表現をうかがわせる作品と考えられます。ヴァチカンのロッジアの装飾には、この作品によく似た空飛ぶ鳥が見られるとされており、本作がそうした大規模な装飾の一部、あるいはそのための習作として描かれた可能性が示唆されていますが、具体的な関連は不明です。素描は、絵画や彫刻の構想を練るため、下絵として、または完成作品の記録として、多様な目的で制作されました。この雀の素描も、彼の創造的なプロセスの一端を示すものと言えるでしょう。

どのような技法や素材が使われているのか 作品は「水彩、赤チョークによるあたりづけ、紙」という技法と素材で描かれています。赤チョークによるあたりづけは、作品の輪郭や主要な形態を下描きとして捉えるために用いられました。その上に水彩絵具で着彩し、雀の生き生きとした姿が表現されています。素描においては、画家の手の跡がより直接的に感じられ、制作過程における試行錯誤や作家独自のこだわりを垣間見ることができるのが魅力です。

どのような意味を持っているのか 「空飛ぶ雀」という作品自体に、特定の深い象徴的意味が直接的に伝えられているわけではありません。しかし、自然界の動植物を観察し、それを表現するジョヴァンニ・ダ・ウーディネの卓越した能力を示すものとして理解できます。彼はグロテスク装飾において、植物や動物、架空の生き物などを組み合わせた幻想的なモチーフを多用したため、この雀の素描も、そうした装飾を構成する自然主義的な要素の一例、またはそのための習作として重要な意味を持っていたと考えられます。愛らしい雀の姿が、彼の観察眼とデッサン力を示しています。

どのような評価や影響を与えたのか ジョヴァンニ・ダ・ウーディネは、ラファエロの工房においてグロテスク装飾の第一人者として活躍し、古代ローマの漆喰装飾に改良を加えてスタッコ技法を確立しました。彼の仕事は、ルネサンスにおける装飾美術に大きな影響を与えました。 「空飛ぶ雀」自体は、彼の膨大な作品群の中の一点ですが、スウェーデン国立美術館が誇る世界有数の素描コレクションの一部として、日本で初めて本格的に紹介される展覧会「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」の「必見の作品」の一つに挙げられています。これは、彼の素描作品が芸術的、歴史的価値を持つと評価されている証拠と言えるでしょう。この作品を通して、観る者は巨匠たちの創造の場に直接立ち会うような臨場感を味わい、画家が試行錯誤を重ねる過程を想像することができます。