マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ (Mirdidingkingathi Juwarnda Sally GABORI)
ミディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリの「私の祖父の国」について詳細に説明します。
背景・経緯・意図
ミディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリは、カイアディルト族の長老であり、オーストラリアの現代美術において最も重要な先住民アーティストの一人として知られています。彼女は1924年頃に、クイーンズランド州カーペンタリア湾のベンティンク島で生まれ、2015年に亡くなりました。彼女の人生の最初の23年間は、完全に伝統的な生活を送り、家族の主要な故郷の地を移動しながら、途切れることのない祖先の文化に従って暮らしていました。
しかし、1948年、干ばつや嵐、約4メートルの高潮などの壊滅的な自然災害の後、彼女とカイアディルト族のコミュニティ全体は、キリスト教の宣教師によって近隣のモーニントン島に移住させられました。この強制的な移住により、カイアディルト族は故郷から引き離され、ラーディル族の土地で西欧の生活様式に適応することを強いられました。ガボリは80歳代になった2005年、モーニントン島のアーツ・アンド・クラフツ・センターで絵画に出会いました。 それまで絵画の経験がほとんどなかった彼女ですが、筆を握るとすぐに、長年にわたり心に抱き続けてきた故郷ベンティンク島の記憶や物語を表現するための新たな手段を見出しました。
「私の祖父の国」を含む彼女の作品群は、故郷への深い郷愁と、カイアディルト族の文化や歴史を次世代に伝えるという強い意志から生まれています。 ガボリは、故郷の場所を何百回も描くことで、愛する人々や場所の記憶を追体験しました。 「私の祖父の国」は、祖父のディンカリンガティーと、兄であるマカーキンガティー・ディンカリンガティー・トゥワトゥ・ビジャーブ(キング・アルフレッド)の国であるディンカリ(ディングカーリ)を描いています。 ディンカリは、ベンティンク島の南にある浅いサンゴ礁ですが、そのすぐ隣には非常に深い水域があり、ジュゴンやウミガメを狩るのに良い場所とされていました。
技法や素材
この作品は2011年に、合成ポリマー絵具とキャンバスを用いて制作されました。 [作品詳細] ガボリの絵画は、大胆で表現豊かな筆致と鮮やかな色彩が特徴です。 彼女は、湿った絵具をキャンバス上で混ぜ合わせ、色調の変化を生み出しました。 これにより、ベンティンク島の地質学的、生態学的な変化、例えば陸から海への移行を表現しています。 彼女の筆致は力強くエネルギッシュで、幼い頃の島の風景に対する親密な知識から生まれる感覚的な質を作品に与えています。 カイアディルト族の文化には、2005年以前には二次元の美術の伝統がありませんでしたが、ガボリは、儀式的な身体装飾の着色や塗布から影響を受けたとされています。 彼女は、色の層を重ねる技法を使い、深みとコントラストのある抽象的な形を作り出しました。
意味
ガボリの作品は、純粋な抽象画と見なされることもありますが、その実践は本質的に具象的であり、アーティスト、その家族、そして「カントリー」にとって深い意味を持つ地形上の参照点、場所、物理的特徴、トーテムが描かれています。 「私の祖父の国」では、ディンカリの小島が潮の満ち引きの異なる段階で、円形、楕円形、または長方形の形で表現されています。 多くのカイアディルト族の絵画と同様に、これは単なる風景描写ではなく、場所と不可分に結びついた人々の肖像画でもあります。 カイアディルト語では、人々や場所は接尾辞「-ngathi」(~で生まれた)によって不可分に結びつけられており、ガボリが場所について描くとき、それはそれらの場所に彼女を結びつける家族の絆について描いていることになります。
彼女の絵画は、ディンカリのような特定の場所と結びついた、祖先の物語、家族の歴史、そして深い個人的な記憶を記録しています。 また、カントリーの色彩や質感、そして彼女の歴史と記憶の複雑さを反映しています。 ガボリは、絵を描きながら、描いている人や場所について笑い、歌い、思い出を語り、完成した作品に対しても歌を捧げることで、絵画、場所、人々との文化的なつながりを再確認しました。
評価や影響
ガボリは81歳で絵画を始めてからわずか1年で初の個展を開催し、完売させるなど、短期間で目覚ましい成功を収めました。 彼女はたちまちオーストラリアの傑出した現代アーティストの一人として認められるようになりました。 彼女の作品は、従来の先住民アートの物語性を打ち破る、大胆で自由な筆致と抑制されない色彩の使用を特徴としており、国際的な注目を集めました。
ガボリの作品は、抽象的でありながら、彼女の故郷のカイアディルト族の土地に関する知識、地図、宇宙論に裏打ちされており、カントリーの色、音、感覚に直感的に反応するものでした。 彼女の表現豊かなスタイルと鮮やかな色彩の使用は、カイアディルト族の「カントリー」のリズムと感覚を反映した経験や記憶を描写しています。
ガボリの功績は、モーニントン島のアートセンターの発展に大きく貢献し、カイアディルト族とラーディル族双方の若い世代のアーティストたちに、先住民以外の美術界でも成功する機会があるという希望を与えました。 彼女は伝統にとらわれず、より現代的なアプローチでアボリジナルアートを表現することの重要性を提示し、多くのアーティストにインスピレーションを与えました。 2015年に彼女が亡くなった後も、彼女の遺産は「Mirdidingkingathi Juwarnda Sally Gabori: Dulka Warngiid – Land of All (2016)」などの大規模な回顧展を通じて称えられ、その影響は国内外の主要な美術館やコレクションに作品が収蔵されることで、さらに広く認識されています。 彼女の作品は、文化や言語の壁を越え、愛、喪失、憧れ、情熱、誇りといった普遍的なテーマを伝え、世界中の多くの人々に深い感動を与え続けています。