マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ (Mirdidingkingathi Juwarnda Sally GABORI)
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリの作品「ニンニュルキ」について詳細にご説明します。
この作品は、「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」と題された展覧会で展示されています。この展覧会は、日本で初めて複数のアボリジナル女性作家に焦点を当てたものであり、オーストラリア先住民の伝統文化の息吹、植民地化を経ての脱植民地化の実践、そしてそれがどのように創造性と交わり、多層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形成しているのかを考察することを目的としています。アボリジナル・アート、特に女性作家の作品は、近年、国際的な現代美術の動向と呼応し、改めて世界的な注目と評価を集めています。
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリは、カイアディルト族の長老の女性であり、彼女の生まれたベンティンク島を故郷とする芸術家です。しかし、1947年から1948年にかけての大干ばつや津波により、ガボリとそのコミュニティはメソジストの宣教師によってモーニントン島へと強制的に移住させられました。 移住後も、彼女は伝統的な生活を送り、樹皮の紐を巻いたり、ディリーバッグやクーラモンを作る技術や知識を共有しました。また、カイアディルトの歌の優れた歌い手でもあり、これらを通じて故郷とのつながりを維持しました。さらに、ベンティンク島の海岸にある石造りの漁獲罠の維持にも重要な役割を果たしていました。 2005年、ガボリはモーニントン島アート&クラフトセンターで作業療法としてアクリル絵具とキャンバスに出会いました。その後すぐにキャンバスに絵を描き始め、彼女の特徴である表現豊かなスタイルと鮮やかな色彩が生まれました。
作品「ニンニュルキ」は、2010年に合成ポリマー絵具と麻布を用いて制作されました。 「ニンニュルキ」とは、ガボリの先祖伝来の故郷であるベンティンク島の南東海岸にある特定の場所を指します。そこには恒久的な淡水のラグーンがあり、魚の罠や砂州、西側の崖、ジュゴンが浅瀬で餌を食べた痕跡など、彼女の故郷の風景が反映されています。 強制移住の後も、ガボリと家族は可能な限りこの「ニンニュルキ」、すなわち「メインベース」や「メインキャンプ」、あるいは親しみを込めて「老婦人たちのキャンプ」と呼ばれる故郷の場所に戻り続けました。 この作品は、ガボリが自身の故郷の土地や海、個人的に深い意味を持つ場所を、色彩と絵画的なジェスチャーを通して直感的に表現したもので、カイアディルト族の土地のリズムと感覚を映し出す体験と記憶を描いています。彼女の作品の意図は、単なる風景描写ではなく、自身の生きた経験と故郷への深い結びつきを視覚的に表現することにありました。
サリー・ガボリは、驚くべき創造的・文化的遺産を残した現代オーストラリア美術の最も高く評価され、求められるアーティストの一人として認識されています。 彼女の作品は、2015年の逝去後も、クイーンズランド州立美術館での大回顧展「Mirdidingkingathi Juwarnda Sally Gabori: Dulka Warngiid – Land of All(すべての土地)」(2016年)で称賛されるなど、その評価は揺るぎません。 彼女のようなアボリジナル女性作家の活躍は、2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で、アボリジナル作家の個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからもわかるように、国際的な現代美術の舞台において、アボリジナル・アートの評価と関心を高める上で多大な影響を与えています。