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故郷を纏う (Maram Barerarerungar)

マリィ・クラーク (Maree CLARKE)

マリィ・クラークの作品「故郷を纏う (Maram Barerarerungar)」は、オーストラリアの先住民族、特に南東部のアボリジナルの伝統文化の復興と、植民地化によって失われた歴史を取り戻そうとする深い意図を持って制作されました。

作品の背景・経緯・意図

マリィ・クラークは1961年生まれのアーティストで、1980年代にジュエリー制作からキャリアをスタートさせました。彼女は、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に、創作を通じて積極的に携わっています。クラークの多岐にわたる制作活動は、レンチキュラー・プリントや3D写真、ホログラムなどの写真技術を用いたマルチメディア・インスタレーションから、彫刻、立体作品、ビデオ・インスタレーションまで広がっています。彼女は先住民の文化と国とのつながりを主張する手段として、伝統的な慣習の回復に焦点を当ててきました。

「故郷を纏う (Maram Barerarerungar)」は、南東オーストラリアの集中的な植民地占領によって彼女の民から失われた儀式用の素材を、世界の博物館で探求する過程から生まれた作品です。クラークはこの知識を新しい技術への魅了と結びつけ、祖先が身につけていた装飾品を巧みに再現し、21世紀において彼らの創造的および儀式的な主権を取り戻すことを目指しています。彼女は決して一人で作業することはなく、家族やコミュニティと知識を共有することで、クーリー文化の慣習における所有権、誇り、美しさを豊かにしています。

この作品は、身体と土地が分かちがたく結びついているという先住民の考え方を表現しています。クラークにとって、私たちを形作る血、皮膚、筋肉、骨は、私たちが生まれた大地と切り離すことができません。 作品名に含まれる「Maram Barerarerungar」は「故郷を纏う」という意味を持ち、これは単に身に着けるだけでなく、土地との精神的なつながりやアイデンティティを表現しています。

技法や素材

「故郷を纏う (Maram Barerarerungar)」は、2016年に制作された作品で、素材として「葦」と「ヒインコの羽根」が使われています。 作品のサイズは500.0cmとされており、その巨大さが特徴です。

クラークの多分野にわたる実践は、伝統的な技術の綿密な研究と注意深い学習を通じて、ポッサムスキン・クローク、ネックレス、ひも状のヘッドバンドなどの制作を復活させる上で重要な役割を果たしてきました。 この作品においても、葦や鳥の羽根といった自然素材を、伝統的な知見に基づきながら現代的な表現として用いることで、先住民文化の継承と革新を同時に図っています。

意味

この作品は、オーストラリアの先住民族が経験した植民地化の歴史と、それに伴う文化の喪失、そしてその回復への強い願いを象徴しています。 「故郷を纏う」というタイトルが示すように、土地(故郷)と個人(身体)が一体であるという先住民の宇宙観を表現し、失われたアイデンティティや伝統を再構築しようとする試みを体現しています。

また、この作品は、先住民女性が経験した喪失と、エンパワーメントの可能性を対比させています。クラークは、女性たちの肥沃さを植民者から解放し、暴力から解放し、それ自体を語り、そのために語ることで、その喪失を乗り越え、再出現、つまり先住民の生命の再生の可能性を祝福しています。

評価や影響

マリィ・クラークは、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に積極的に関わるアーティストとして高く評価されています。 彼女の作品は、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じさせると同時に、脱植民地化の実践が創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っていることを考察する機会を提供しています。

「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展は、複数のアボリジナル女性作家に焦点を当てる日本で初めての機会であり、クラークの作品はその重要な一部として展示されました。 この展覧会は、アボリジナル・アートが持つ力強さ、現代性、そして歴史的背景に根ざした深いメッセージを日本の観客に伝え、大きな反響を呼びました。 クラークの作品は、伝統文化の回復と現代アートの融合という点で、オーストラリア内外のアートシーンに影響を与え続けています。