ジュリー・ゴフ (Julie GOUGH)
ジュリー・ゴフの映像作品「トマラ」について、その背景、経緯、意図、技法、素材、意味、そして評価や影響について詳細にご説明します。
ジュリー・ゴフは、タスマニアを拠点とするアボリジナルのアーティスト、作家、キュレーターです。彼女の作品は、過去が現在に与える影響を問い直し、再評価するため、歴史的な物語を掘り起こし、再提示することを一貫して行っています。
この「トマラ」という作品も、彼女のこうした芸術活動の文脈の中で制作されました。
ジュリー・ゴフは、母方のルーツをタスマニアのアボリジナル、特にテブリクンナ地方に持つ人物です。 彼女は、自身の系譜を深く探求することで、タスマニア・アボリジナル女性としてのアイデンティティと、過去の遺産が現在をどのように形作っているかを理解しようとしています。 彼女にとって、植民地化されたオーストラリアは「犯罪現場」であると捉えられており、公文書の調査や口頭伝承から、特にタスマニアの植民地時代の、語られることのない、しばしば対立する歴史を明らかにすることを意図しています。
彼女の作品制作の主な動機は、記憶、時間、不在、場所、表現といった、未解決の国家的な物語における私たち自身の役割と、その物語との近接性について、鑑賞者がより深く理解するように促すことです。 多くの先住民にとって、文化的な大量虐殺や土地との断絶を強制した政府の政策により、過去は未知の場所となっています。ゴフは、これらの共有された歴史を非先住民の観客にも提示し、再考を促すことを目指しています。 「トマラ」は、このような個人的な探求と、より広範な社会的・歴史的な問いかけが交差する点で、ゴフの芸術的な意図を体現する作品と言えるでしょう。彼女は、鑑賞者を巻き込み、私たち全員が絡み合った歴史を認識するよう働きかけています。
「トマラ」は、2015年に制作された、マーク・クィレンバーグが編集を手がけた4分50秒の映像作品です。
ジュリー・ゴフの作品は、しばしばインスタレーション、音、そして映像を組み合わせて、儚さや不在を探求します。 彼女は、視覚芸術、博物館、図書館、店舗、庭園、自身の祖先など、多様な情報源から得た発見物や制作されたオブジェ、技術を活用します。 天然素材や、時にはキッチュな既製のオブジェを再利用することも特徴です。 映像作品である「トマラ」も、彼女のこうした多角的なアプローチの一環として、過去の歴史や現在の状況を表現するために、独自の映像表現や編集が用いられていると推測されます。具体的にどのような映像が使用されているかの詳細は記述されていませんが、彼女の他の作品の文脈から、アーカイブ映像、個人が撮影した映像、あるいはそれらを組み合わせたものが含まれている可能性があります。
ジュリー・ゴフの作品は、「記憶、忘却、喪失、否定、そして過去の力」の場所を探求しています。 彼女は、タスマニアのアボリジナルが、彼らの伝統的な土地や家族からどのように断絶されてきたか、そしてその分散、禁止、排除、売却といった痛ましい歴史を提示します。 彼女の芸術は、植民地時代の記録の一方的な性質に異議を唱え、過去が現在をどのように形成し続けているかを考察します。
「トマラ」という作品名自体が、ゴフの先住民の遺産やタスマニアの特定の場所、出来事に由来する深い意味合いを持つ可能性があります。彼女の作品は、鑑賞者が作品の中を旅し、過去と現在を行き来することで、個人的な記憶と国家的な記憶の間を行き来できるよう導くことを目指しています。 したがって、「トマラ」もまた、鑑賞者に対して、タスマニアのアボリジナルの視点から見た歴史的真実に目を向けさせ、植民地化がもたらした複雑な記憶とアイデンティティの問題について深く考えるよう促す、多層的な意味を持つ作品であると言えるでしょう。
ジュリー・ゴフは、オーストラリア内外で広く評価されているアーティスト、作家、キュレーターです。 彼女の作品は、オーストラリア国立美術館、ヴィクトリア国立美術館、タスマニア州立博物館・美術館など、多くの公的および私的コレクションに収蔵されています。 彼女はシドニー・ビエンナーレやリバプール・ビエンナーレなど、国内外の著名な展覧会で作品を発表しており、その影響力は広範に及びます。
批評家たちは、彼女の作品を「概念的な厳密さ」を持ち、「確信を持って制作され」、「誠実で」、「崇高なほど美しい」と評しています。 彼女の芸術は、タスマニアの植民地時代の人物、場所、出来事に命を吹き込み、鑑賞者が過去をより深く体験する機会を提供することで高く評価されています。 公文書を綿密に調査する彼女の「法医学的」なアプローチは、25年以上にわたり彼女の芸術活動を支えてきました。
「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展に「トマラ」が出品されていること自体が、ゴフの作品が現代アボリジナル・アートおよびオーストラリア現代美術において重要な位置を占めていることの証です。この展覧会は、複数のアボリジナル女性作家に焦点を当て、彼女たちが植民地化を経てどのように脱植民地化を実践し、創造性と交差しながら現代のアボリジナル・アートを形作っているかを考察するものであり、ゴフの作品がこの重要な議論の中心にあることを示しています。