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タンギ(ロバ) (Tangki - Donkey)

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ (Tjanpi Desert Weavers)

「タンギ(ロバ)」という作品について、背景、経緯、意図、技法、素材、意味、評価、影響など、詳細に説明します。

1.制作の背景、経緯、意図

「タンギ(ロバ)」は、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズが二〇二一年に制作した、五分五十三秒のストップモーションアニメーション映像作品です。ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、一九九五年設立された、ンガーニャトジャラ、ピチャンチャチャラ、ヤンクニチャチャラ・ウィメンズ・カウンシルによるソーシャル・エンタープライズです。オーストラリア中央部と西部の砂漠地帯にある二十六以上のコミュニティの四百人を超えるアボリジナル女性アーティストが参加し、繊維アートを通じて収入を得ることを目的としています。作品制作は、文化を強く保ち、知識を伝え、故郷とのつながりを維持するための手段とされています。女性たちは故郷の地で集まり、草を集め、彫刻や織物を制作し、歌い踊りながら文化を育んでいます。

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、繊維作品を用いたさまざまな物語の表現方法を探求する、アーティスト主導のアニメーションプロジェクトを複数手掛けており、「タンギ(ロバ)」もその一つです。この作品は、オーストラリア南部のAPYランドにあるプカチャ(アーナベラ)の砂漠のコミュニティにロバが導入された経緯と、アナングの人々とロバの間に生まれた特別な絆を描いた心温まる物語です。

ピチャンチャチャラ語と英語の二言語で語られるこの物語は、複数世代にわたる三人のアナング女性の視点から描かれています。最初は見慣れない動物であるロバに警戒していたアナングの人々が、やがてロバを友とし、ピクニックや長距離の移動に利用するようになります。自動車の登場によってロバとの関係は変化しますが、一頭の特別なロバがプカチャの人々の良き友人として残り続ける様子が描かれています。

2.技法と素材

ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、主にピチャンチャチャラ語で「乾燥したスピニフェックスの草」を意味する「ジャンピ」と呼ばれる、自生する草やラフィアなどの繊維素材を用いて彫刻を制作することで知られています。

しかし、この作品「タンギ(ロバ)」は映像作品であり、彼らの特徴的な繊維彫刻を用いたストップモーションアニメーションという技法が使われています。アーティストのエリザベス・ダンとイムナ・ケンタは、アニメーター兼共同監督であるジョナサン・ドーをはじめとするアーティスト、ストーリーテラー、プロデューサー、クリエイターのチームと共に、彫刻されたキャラクターたちを命を吹き込むために協力しました。 繊維アートの持つ触覚的な質感と、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズの作品特有のどこかユーモラスな性質が、ストップモーションアニメーションというメディアと調和し、作品の魅力を高めています。

3.作品が持つ意味

「タンギ(ロバ)」は、アナングの人々の視点から、心温まるユーモラスな洞察を提供しています。作品の中でロバは「マルパ・ウィル」つまり「大切な友人であり助けとなる存在」として描かれています。

このアニメーションは、アナングの人々の生活に関する重要な洞察を、アナングの声で、アナングの言語で、そしてアナングの故郷の地で語ることで、文化的な物語の伝承を担っています。 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズの作品全体に共通するテーマとして、作品は「チュクルパ」(祖先の物語、法)を共有するための媒体であり、同時に現代の問題や関心事にも応えるものでもあります。ロバがコミュニティの生活の一部となった物語は、このテーマを反映しています。

4.評価と影響

「タンギ(ロバ)」は、二〇二二年のシドニー映画祭で二つの賞を受賞しており、心温まる魅力的な短編映画として評価されています。

この作品は、他のジャンピ・デザート・ウィーヴァーズのアニメーション作品と同様に、初等教育カリキュラム向けの教師用学習ガイドの教材としても活用されており、幅広い年齢層の生徒に適用可能です。

二〇二五年六月二十四日から九月二十一日までアーティゾン美術館で開催される「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」展において、「タンギ(ロバ)」が展示作品の一つとして選ばれています。 この展覧会は、日本で初めて複数のアボリジナル女性作家に焦点を当てる機会であり、彼女たちがどのようにしてアボリジナル・アートおよびオーストラリア現代美術の中心的存在となり、脱植民地化を実践しているのかを探求するものです。

アボリジナル・アート、特に女性アーティストによる作品は、二〇二四年の第六十回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展でオーストラリア館が金獅子賞を受賞するなど、国際的に再評価され注目を集めています。 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、伝統的な技術を二十一世紀の生活体験と融合させる現代アートの革新者として認識されており、伝統的な「工芸」とされた芸術形式をアートとして位置づけることに貢献しています。