ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ (Tjanpi Desert Weavers)
「クカプジュ(ハンター)」は、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズというアボリジナルの女性アーティスト集団によって、二〇二一年に制作された映像作品です。五分四十八秒のストップモーションアニメーションとして発表されました。
この作品は、「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」という展示会で紹介されました。この展示会は、日本で初めて複数のアボリジナル女性作家に焦点を当て、伝統文化がどのように現代の創造性と交わり、脱植民地化を実践しているのかを考察する重要な機会となっています。
作品が作られた背景と意図についてです。 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、オーストラリアの中央部から西部砂漠地域にまたがる二十六のコミュニティに所属する四百人以上のアボリジナル女性アーティストからなる社会貢献型の団体です。千九百九十五年にNgaanyatjarra Pitjantjatjara Yankunytjatjara Women's Councilによって設立されました。その主な目的は、アボリジナル女性たちが自分たちの文化に根ざした方法で収入を得る機会を作り出し、故郷に住み続けながら家族を支えることを可能にすることでした。彼らの芸術活動の中心には、草を集めるために故郷の土地へ出かけることがあり、これは同時に狩りや食料の採集、伝統的な歌や踊り(inma)の披露、そして子供たちに故郷の自然や文化を教える大切な時間でもあります。 「クカプジュ(ハンター)」を含む彼らのアニメーション作品は、ファイバーアート(繊維芸術)を用いた新たなストーリーテリングの方法を模索するという、アーティスト主導の強い思いから生まれました。アニメーションという形式は、ジャンピの彫刻が持つどこかユーモラスで気まぐれな性質を際立たせ、その触覚的な芸術性を表現するのに非常に適していると評価されています。これらの映像作品は、アナングの人々の実際の生活について、彼ら自身の声で、彼らの言語で、彼らの故郷の土地(カントリー)から語られる、貴重な洞察を与えてくれます。 特に「クカプジュ(ハンター)」は、ピチャンチャチャラ族の女性ヤニャンカリ・ロマ・バトラーの日常を切り取ったエピソードとして制作されました。
作品で使われている技法や素材についてです。 「クカプジュ(ハンター)」は、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズの代表的なファイバー彫刻を主要な素材として使用したストップモーションアニメーションです。ジャンピのアーティストたちは、砂漠に自生する乾燥したスピニフェックスグラスという草と、染色されたラフィア、エミューの羽、糸、ワイヤー、動物の毛皮、ビーズ、種子といった様々な素材を組み合わせ、人物や動物の形をした彫刻や、バスケットなどの容器を編み上げます。 彼らはコイル編みという伝統的な技法を用いています。これは、アボリジナル女性が何世代にもわたって葦や草の茎でマットやバスケットを作ってきた、非常に古くから伝わる技術です。この作品は、これらのファイバー彫刻、ストップモーションアニメーション、そして口頭での語りという三つの芸術形式を見事に融合させています。 映像全体のスタイルと色彩は、彼らの故郷であるNPYランドの豊かな自然環境をありありと映し出しています。この作品のディレクターはジョナサン・ドー、文化ディレクターはヤニャンカリ・ロマ・バトラー、プロデューサーはミシェル・ヤングとジャンピ・デザート・ウィーヴァーズが担当しています。
作品が持つ意味についてです。 「クカプジュ(ハンター)」は、主人公であるヤニャンカリ・ロマ・バトラーと、彼女の賢い犬クンカが、ブッシュ(奥地)で狩りをするという日常の出来事を物語っています。二人が思いがけないものを捕獲し、その喜びを仲間たちと分かち合う様子が描かれています。 この軽快な物語を通して、アナングの文化と歴史における重要な詳細が伝えられています。ジャンピのアートワーク全体は、Tjukurpa(祖先の物語や法)を共有するための媒体であり、同時に現在のアナングの人々が直面している問題や懸念にも目を向けています。このアニメーションは、アナングの人々の生活に対する深い洞察を提供し、彼ら自身の声と、彼ら自身の言語で、彼らの故郷の土地の物語を語りかけてきます。 より広い意味では、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズの作品はすべて、故郷の土地、文化、そして日々の暮らしの物語をその中に宿しています。
作品の評価と影響についてです。 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、オーストラリア国内の主要なアートギャラリーや世界中でその作品が展示されており、国内外の公立および個人のアートコレクションに多数収蔵されています。特に、二〇〇五年には、多くのアーティストが共同で制作した「ジャンピ・グラス・トヨタ」という作品で、権威あるテルストラ全国アボリジナル・トレス海峡諸島民アート賞の最高賞を受賞しています。 彼らのアニメーション作品は、若い学生たちが西砂漠地域の独特で魅力的なアボリジナルの歴史と文化を学ぶ上で、非常に親しみやすく、かつ魅力的な方法として高く評価されています。これらのアニメーションは、オーストラリアの教育カリキュラムにおける様々な分野、例えばアボリジナルおよびトレス海峡諸島民言語の枠組み、人文社会科学(HASS)、芸術(メディアアート)などと関連付けて活用することが可能です。 このアニメーション制作プロジェクトは、オーストラリア政府の先住民言語・芸術プログラムからの支援も受けています。 ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、現代アート界において注目を集めるアボリジナル・アートの主要な担い手の一つであり、彼らの活動は、オーストラリア中央部の広大な地域に暮らす女性たちに、経済的な収入と文化的な表現の機会を両方提供しています。彼らの作品活動は、故郷の土地、文化、そしてコミュニティの持つエネルギーとリズムを具現化し、砂漠の地域に根付く織物芸術の伝統を未来へと繋ぐ重要な役割を果たしています。